「相続税申告」に関するお役立ち情報
相続税の修正申告が必要なケース
1 相続税の修正申告とは
相続税の修正申告は、相続税の申告書を税務署に提出し申告を終えた後に、申告内容の誤りに気が付いた場合や申告内容に変更が生じた場合等に、その誤りを修正するために行うものです。
相続税の修正申告には、相続税額を過少に申告していた場合に行う修正の申告と、相続税額を過大に申告していた場合に行う更正の請求の2種類があります。
修正申告の場合は、修正後の申告内容に基づき相続税を追加で納めることになります。
2 相続税の修正申告が必要となる具体的なケース
相続税の修正申告が必要となる具体的なケースとしては、相続財産の評価または税額計算に誤りがあった場合、相続税申告後に新たな相続財産が発見された場合、未分割申告を行っていた場合、遺留分侵害額請求をして遺留分侵害額相当の支払いを受けた場合などが挙げられます。
⑴ 相続財産の評価または税額計算に誤りがあった場合
相続税という税分野が有する大きな特徴のひとつとして、他の税分野にはない特有の財産評価方法が存在することが挙げられます。
相続税は、相続財産の評価額に対して課せられる税金であり、相続財産を取得した者がその取得した財産の評価額に応じて支払うべき税額を算出するため、相続財産評価に誤りがあると、税額にも誤りが生じることになります。
相続財産には、土地や建物などの不動産、預貯金、上場株式、死亡保険金、退職手当金など様々なものがあります。
相続財産の評価は、相続開始日時点の時価が原則になります。
もっとも、相続財産の種類によって評価方法が異なる場合があります。
特に土地は価値が高いことが多い上、土地の形状などによって様々な減額要素があります。
そのため、土地の評価を適切に行えるかどうかで、相続税の課税対象となる相続財産の総額が大きく変わることがあります。
不動産の評価については、財産評価基本通達等によってルールが定まっていますが、立地条件、地形の状況などによって様々なルールが存在するため、評価額が異なってきます。
さらに、土地の評価額を大幅に下げることができる特例も設けられているため、評価額の算定を誤りやすいといえます。
⑵ 相続税申告後に新たな相続財産が発見された場合
相続税の申告及び納付は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。
相続税申告をするためには、被相続人にどのような相続財産があるかを確定する必要がありますので、その調査もしなければなりません。
被相続人の財産が明確である場合は問題が起きにくいのですが、被相続人と離れて暮らしていて生活の状況をあまり知らなかった場合や、被相続人が秘密主義者で財産について何も知らされていなかったり、財産に関する資料を紛失してしまっていたりするような場合、相続財産の正確な調査に時間を要することがあります。
十分な調査ができないまま申告をしてしまったり、調査に漏れがあると、申告後に新たな財産が発見されるという事態も考えられます。
例えば、被相続人が昔にリゾート地の土地を購入していたものの、被相続人自身もそのことを忘れてしまっていたようなケースにおいては、申告期限後にその土地に関する資料が見つかったり、自治体からの通知によって土地の存在が判明するということもあります。
⑶ 未分割申告を行っていた場合
相続税は、遺言がない場合、原則として、遺産分割協議によって各相続人が取得する相続財産が確定していることを前提に、各相続人がその取得した財産の価額に応じて支払うべき税額を計算し、申告と納付を行います。
しかし、遺産分割がまとまらず、遺産分割協議を終えられないまま相続税の申告期限を迎えてしまうことも少なくありません。
そのような場合でも申告期限内に申告をしなければ、無申告加算税や延滞税が課せられてしまいますので、一旦は法定相続割合で遺産分割をしたと仮定して、相続税の申告と納付を行うことになります。
そして、遺産分割協議が完了した後、改めて遺産分割の内容に従って各相続人の相続税額を算定し、修正申告等を行うことになります。
⑷ 遺留分侵害額請求をして遺留分侵害額相当の支払いを受けた場合
遺言がある場合で、自己の個別的遺留分割合に満たない相続財産しか取得できなかったときは、一部の相続人には遺留分を侵害されているとして、相続財産を取得した他の相続人や受遺者に対し、遺留分侵害額請求をすることができるケースがあります。
そして、遺留分を侵害されていた遺留分権利者が遺留分侵害額相当の支払いを受けた場合、それによって取得した財産の額が変わってきますので、場合によっては、合意後4か月以内に修正申告をしなければならない可能性があります。
期限までに適切に相続税の申告ができないとどうなるか 適切な相続税申告を行うことができなかったケース